梅津酒造 【鳥取県】

梅津酒造銘柄の冨玲は、三代目にあたる祖父が、若くしてアメリカに留学。テニスの名手でもあり、アメリカの大会でも優勝するなど、活躍。そのときの応援の掛け声、フレーッ! フレーッ! (Hulle! Hulle!)に由来する。
今まさに誰もがフレーッ! フレーッ!と声をあげたい時代。
ピカ一と思える酸の出方を伴なった酒質の「冨玲」がその酒名と共に輝き始めた。
蔵は、日本海の波の音の聞こえる海沿いの街、北栄町にあり、静かな佇まいの板塀が印象的な、手造り蔵です。蔵元の梅津さんが杜氏を兼ね、地元の蔵人と5人で日本酒を中心に、砂丘で採れた長芋を使う本格焼酎や、日本一大粒となる野花梅(ノキョウウメ)を使った梅酒を製造しています。日本酒はすでに全量純米酒。生酛造りも挑戦して、今年で5度目のつくりを迎える。例年より早く仕込み始めるそうで、緊張感の漂う9月末に訪問。仕込み蔵から野花地区の梅の栽培地まで、拝見させて頂いた。
梅津酒造蔵元 梅津さんと
5代目蔵元梅津さんは、当初酒造りを継ぐ気ではなかったが、醗酵工学の博士でもある父の意志で蔵に戻る。しばらくすると、杜氏が急に退任することになり、自ら酒造りをする事を決意。今から10年前 ちょうど40歳から真剣に酒造りを取り組む事となりました。「まだキャリア10年の新米です。」と話されましたが、 スタートを切った梅津さんの活躍は凄い。「酒は純米、燗ならなお良し」で知られる 故上原浩鳥取県酒造技術顧問の薫陶も受け、完全醗酵、燗上り純米の酒造りを突き進む。近年、竹鶴石川杜氏の教えもあり、生酛造りを始め、今では独自のアレンジも加えて、所謂「梅津の生酛」を世に出した。生酛元年、日本酒度がキレ、酸度もかなり上り、手ごわい生酛で、これは、売れないかと思い、放っておいたものが、二年三年経つうちに、「味が落ち着いて生まれ変わった。」と、生酛の面白さを話してくれました。
蔵元はあまり分析値にこだわらない。造りの段階さえしっかりと踏んで進めば必ず良い酒になると、自然の力を信じる造り手です。生酛においては酵母も無添加。今年からは、50%の生もと吟醸に挑戦する。
20世紀梨で知られる鳥取でも、梅津酒造の隣町東郷の梨は特に有名。日本海から直に小高い山地となる一帯は、山の斜面を利用して、梨畑が広がる。野花(のきょう)と呼ばれる地区に梨畑に混じって梅の木の林があり、梅の栽培も盛んだ。その中に昔から妙に大粒の素晴らしい芳香の実をつける樹があり、その原木から交配が始まって、この一帯は野花梅(豊後梅の突然変異種)と呼ばれる完熟すると直径5cmにもなる日本一大粒の梅の実の産地となった。この凄い梅で何とか梅酒を造ろうと、梅津さんと梅の生産者との談判が始まる。完熟した梅は、採るタイミングや、取扱いも難しく、梅酒になるまでには苦労話があったが、純米原酒で漬けられた梅酒は、ふくよかで濃醇な「野花ノキョウ梅酒」となって販売された。今ではヨーロッパで評判となり、梅津さんは毎年ドイツやフランスへ渡る。
私共でも、今年梅津さんより、完熟野花うめを分けてもらい純米原酒「梅ちゃん」に漬けました。届いた梅の実を見てビックリ。大粒の枇杷の様な黄金色、薄皮は丁寧に扱わないとペロリと剥けてしまいます。熟成を待ちきれずに時々飲みますが、何とも言えぬ美味しさ。一年二年と経つとどうなることかと楽しみです。
梅津酒造の『冨玲』 酸の出方はピカ一です。決して飲み飽きすることのない切れ味を、是非お燗でお楽しみ下さい。飲めば急にお腹が空いてきます、ご飯のように料理との相性が良い為でしょう。

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